甘草は名前に「甘」があるように、甘い生薬です。そのため漢方だけでなく食品にも使用されるなど、甘草の利用法は多岐にわたります。漢方処方において甘草は非常に重要な役割を担う生薬として知られています。
DATA |
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植物の名前 | カンゾウ |
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学名 | Glycyrrhiza uralensis |
所属科 | マメ科 Leguminosae |
薬用部位 | 根およびストロン |
・トリテルペンサポニン:glycyrrhizin(グリチルリチン酸 glycyrrhizic acid)
・フラボノイド:liquiritin(リクイリチン)
(1)甘草エキス
抗潰瘍作用、鎮痙、鎮痛、解毒、胃液分泌抑制、副腎皮質ホルモン様作用、エストロゲン様作用などを示す。
(2)グリチルリチン酸
抗腫瘍作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用などを示す。
偽アルドステロン症(低カリウム血症、血圧上昇、浮腫):甘草製剤の多量・長期服用により発症する副作用
甘草に含まれる成分であるグリチルリチンが体内で代謝されるとアルドステロンに似た構造となります。甘草を含む医薬品や漢方を多量・長期服用していると、ナトリウムと水の再吸収の促進やカリウムの尿中排泄が起こり、その結果、血圧上昇や浮腫、低カリウム血症が引き起こされます。あたかもアルドステロンが上昇したように作用するが、実際にはアルドステロンの上昇が起こっていないために、この症状は偽アルドステロン症と呼ばれます。
ミオパチー(ミオパシー):低カリウム血症により起こる筋疾患
主な症状としては四肢の脱力、筋肉痛、麻痺、痙攣、倦怠感などの症状が現れます。
これら副作用は前述したように、甘草製剤の過剰・長期摂取により引き起こされるものです。
緩和 : 症状を和らげる
矯味 : 味を改善する
鎮痛(咽頭痛など) : 痛みを和らげる
鎮咳 : 咳を止める
去痰 : 痰を除去する
抗潰瘍 : 潰瘍を防ぐ
グリチルリチン酸製造原料
調和薬性:処方全体の作用を緩和、調和し、副作用を軽減する。
このような性質があるため、甘草は漢方処方の70%以上に配合されています。
矯味:味を矯正し広義の味覚に合わせて服用しやすくする。
甘草の主成分であるグリチルリチン酸の甘味はショ糖の150倍であり、カロリーゼロであることから、多くの食品に使用されています。例として醤油、味噌、漬物、つくだ煮、清涼飲料水、魚肉練り製品、氷菓子、乳製品など幅広く使用されています。
特に甘草の成分による特徴である調和薬性は漢方処方において非常に重要であるため、数ある生薬の中で最も重要な生薬であると言えます。
グリチルリチンは体内で代謝され、グリチルレチン酸と3MGAになります。
アルドステロンは腎臓の尿細管上皮細胞のミネラルコルチコイド受容体に結合し、カリウムの尿中排泄とナトリウムの再吸収により体液中の水と電解質の量や濃度を調節するといった作用を示します。コルチゾルもこの受容体に結合して同じ作用を現しますが、通常は11β-水酸基ステロイド脱水素酵素2型によってコルチゾンに代謝されるので、受容体への作用はありません。
しかし、グリチルレチン酸と3MGAはこの酵素の活性を阻害するので、コルチゾルは分解されずに受容体に蓄積し過剰に刺激され、あたかもアルドステロンが上昇したかのように血清カリウムの減少と血清ナトリウムの増加を招きます。
偽アルドステロン症が引き起こされるメカニズム
しかし、この副作用は甘草製剤の長期や多量摂取により引き起こされることであり、副作用などの有害事象よりもメリットの方が断然に大きいので非常に多くの漢方などに含まれています。