●いよいよ定年です！ お世話になりました
いよいよ定年です！
お世話になりました
大学院工学研究科 機械システム工学専攻
工学部 福祉生体工学科
教授 丸山 晃市
１．はじめに
平成17年度を迎えて早3ヶ月目も半ばになりました。つい、数年前に機械工学科創立30周年の祝賀の行事や記念誌の作成などを、学科主任の立場で終えたばかりと思っていました。まさに、「光陰矢のごとし」です。
ご存知の通り、北海道工業大学は2001年を期して大改革を行い、機械、経営、電気、応用電子、土木、建築の6工学科体制から、環境デザイン、情報デザイン、福祉生体工、建築、社会基盤工、機械システム工、情報ネットワーク工、電気電子工の8学科体制へ再編しました。そして、今年の春、その第1期生を世に送り出しました。
これから先の文章は、『私事』中心になることをお許しください。また、定かでない記憶をたどりながらのこと、一切の資料を参考にしていないこと、などをご高配のうえ、お読みいただければこの上ない幸せです。
お世話になりました
大学院工学研究科 機械システム工学専攻
工学部 福祉生体工学科
教授 丸山 晃市
１．はじめに
平成17年度を迎えて早3ヶ月目も半ばになりました。つい、数年前に機械工学科創立30周年の祝賀の行事や記念誌の作成などを、学科主任の立場で終えたばかりと思っていました。まさに、「光陰矢のごとし」です。
ご存知の通り、北海道工業大学は2001年を期して大改革を行い、機械、経営、電気、応用電子、土木、建築の6工学科体制から、環境デザイン、情報デザイン、福祉生体工、建築、社会基盤工、機械システム工、情報ネットワーク工、電気電子工の8学科体制へ再編しました。そして、今年の春、その第1期生を世に送り出しました。
これから先の文章は、『私事』中心になることをお許しください。また、定かでない記憶をたどりながらのこと、一切の資料を参考にしていないこと、などをご高配のうえ、お読みいただければこの上ない幸せです。
２．開学当時のこと
私は、昭和42年（1967）4月1日付で、当時の学校法人自動車学園（現・北海道尚志学園）が設立した北海道工業大学に物理の教師として採用（出身が理学部物理学科だったせいで）になり、身分は助手でした。大学を出てすぐに理化学研究所に入り、3年と1日で退所、日本楽器製造�蝓文宗Ε筌泪廊蝓砲遼務て算拇江�託となり、1年で退社してこの大学へ赴任しました。今年で38年目を迎えております。当初、教養部に所属し、三好康雅先生（当時講師）の下に配属されました。ちなみに、三好先生は私より1歳若い。
現在の校舎はまだ工事中で、私たち新人５人は、中の島の北海道自動車短期大学5階の１教員室に間借り生活を始めました。故高橋徹先生（後に法人の専務理事、現職のままご逝去）のご案内でその部屋に通されたとき初めてお会いした先生は、千葉宣一助教授（当時、文学担当。3年くらいで帯広畜産大学へ）、小林修講師（当時、ドイツ語担当。20年後、創価大学へ）のお二人で、間もなく若き岩井泰夫助手（当時、数学担当。現在、総合教育研究部部長、学校法人評議員）がお見えになり、ややしばらくして、三好康雅講師（当時、物理担当。昨年3月をもってご勇退。本学名誉教授）が着任。小さな部屋にぎっしりと入れた机と椅子を5人の新人がひしめいておりました。
その頃の学園本部は、増永治作理事長初め、上層部には警察上がりの方々がいらっしゃいました。本学も初代事務局長、故小山内清衛氏もその一人。昭和41年12月に認可され、翌1月から学生募集を始めたので、機械工学科と経営工学科の2学科、それぞれ定員60名ずつでしたが、思うように学生が集まらなく、私の記憶でも4月に2回か3回の入学試験に立ち会いました。全員の面接がありました。第1期生の数は、結局、機械約100名、経営約70名ほどで始まりました。三好先生と小林先生（講師組）が機械の担任、私と岩井先生（助手組）が経営工学科の担任に決まりました。
4月も中旬を迎える頃から、学則や学生生活に関する規則作りに追われるようになり、連日夜10時頃まで会議の連続があったように記憶しております。そろそろ学生運動がにぎやかさを報道される頃でもあり、学生生活に関する規則類は、それに関する項目で被いつくされている感じを持ちました。
4月中旬頃の会議で、われわれ5名の新人教師のための新校舎の部屋割りが決まりました。ようやく内装が終わったので、明日からは前田の校舎に勤務してよろしい、ということになって、長靴を履いて、手稲まで国鉄（当時）で出かけました。幸い、新たな門出を祝うような晴天だったことを記憶しております。
当時の手稲駅は、木造平屋建てで、南口しかありませんでした。今の北口界隈には、牧場があり、牛がのんびりと草を食んでいましたし、『オーシャン』だったと思いますが、酒蔵のような木造の建物も駅に隣接していました。
手稲駅のホームから遠くに工大だと思われる建物が見えました。南口を出て、駅舎をぐるりと迂回して、踏切を渡り、現在の北口方面に出ます。駅と大学と思われる建物の間には、ほとんど住宅らしいものはなく、原野が広がっていたように思います。当時の本学は、それほど『人里離れたところ』に位置していたのです。中の島校舎で入学試験を受けた第1期生諸君は、はたして、どんな感情をもって大学へ来るだろうか、などと思いながら、北海道工業大学だと思われる建物に向かって歩き始めたものです。20分ほども歩いた頃、かまぼこ型の体育館らしい建物が見えました。たしか、体育館はまだないはず、と思いながら歩き続けました。それは、鉄北小学校の校舎でした。
その向こう側に3階建ての建物が見えましたが、窓から布団を干しております。大学の校舎が3階建てであることは、頻繁に行われた打合せで頭に入っておりました。それにしても、内装が済んだばかりの校舎で布団を干すわけがありません。そこは、旧国鉄の官舎でした。30分も歩いたでしょうか。ようやく広々とした空き地の片隅に木材の足場がかかった3階建ての建物に到達しました。工事を続けている人々の姿が見えました。
さて、どこからあの建物に入っていくのか。正門も何もありません。もちろん、「北海道工業大学」という「看板」もありません。ただ、右手に木造の平屋の建物があり、やがて、それは大型車教習所の事務所と管理住宅であることがわかりましたが･･･。私の格好は、晴天に長靴スタイルでしたが、これが正解のスタイルであることにすぐ気がつきました。新築中の工大に入るためには、運び込んだ未整地のグランドをずぶずぶぬかりながら進む以外の方法がなかったのでした。
ほうほうの体でたどり着いた校舎に入ろうとしましたが、長靴が泥だらけです。幸い、玄関の近くに靴洗い場（？）のような場所があり、水道から水を出して靴を洗い、校舎に入ります。あらかじめ会議で見ていた図面に従って、2階へあがり、私の部屋として予定されていたところにたどり着きました。内装がすんだ直後のため、校舎の中はペンキとシンナーのにおいで満ちていました。ドアは開いたままでしたので、中を覗きますと、机も椅子も戸棚も何もかもなく、まだ空っぽです。ついでに他の部屋も覗いてみましたが、条件は同一でした！
その後、どのような経路をたどって、手稲の地で勤務するようになったか、ほとんど記憶に残っておりません。初日の印象があまりにも強烈だったために、記憶喪失したのでしょう。いつの間にか机も椅子も戸棚も揃った部屋で、新しい生活を始めておりました。
３．開学式と入学式
昭和42年4月27日（あるいは28日？）、かろうじて4月中に開学にこぎつけました。1号館3階の2教室分を続けた部屋で、開学式に引き続き入学式が厳粛に執り行われました。学校法人や短大からの方々を含め、数十人の来賓とともに、機械工学科と経営工学科の新入生約170名が晴れやかな顔をそろえました。当時の趨勢として、ほとんどの新入生が学生服でした。
私は、大学の教師になるなどと考えてもいなかったころゆえ、全員男子ばかりの新入生を前にして、ものすごく緊張していたことを忘れません。式が午前中から始まったのか、午後だったのかすら覚えておりません。
おそらく、2時間ほど（だろうと思っています。）で両方の式が終わり、そのあとは何をしたのか、その日の流れが皆目記憶にありません。よほど重症の記憶喪失に侵されていたのでしょう。その日もたしか晴天だったはずです。もはやグランドもぬかることはなかったはずです。
４．校歌の思い出
ピロティを含む2号館が完成した頃、私の知らないところで校歌の制定の話が進んでいたようです。開学以来4、5年ほども過ぎた頃だろうと思います。初代学長の武田直秀先生から第2代学長の黒岩保先生に代わっていました。武田先生は、開学1年ほどたった頃、心臓の病で倒れられ、年度途中から黒岩先生が代理を勤められ、新年度から第2代学長に就任されていました。当時はまだ、短大と工大の学長を兼務されていた時代です。
ある日、突然、学長からお声がかかり、校歌について相談したいから君も出席しなさい、といわれました。当時、本学で倫理学（哲学？）を集中講義されていた藤井義夫先生（前・一橋大学教授）が作曲家の服部正氏（当時、国立音楽大学の教授）をお招きして、作詞と作曲を依頼しようということでした。その少し前に、千葉先生のあとを継いだ文学ご担当で学生部副部長の某先生から、「校歌」という標題の歌詞と楽譜を渡され、サニーフィールズが演奏できるように編曲してください、という依頼を受けておりました。そのとき初めて、某先生の作詞が長すぎるという理由で「ぼつ」になったことを耳にしました。しかし、当然、「ぼつ」手当てはいただいたことをそのご本人から聞きました。
某先生作詞作曲による校歌を家に持ち帰り、編曲すべく取り組んでみましたが、某先生の曲は、音域が広く、歌詞の1字1字に当てた音符のため各小節の単位が4の倍数になっておらず、このままではサニーフィールズが演奏可能な編曲ができないという結論に達しました。「変曲」をするしかないという判断でしたが、念のためサニーフィールズを創設した第1期生の加藤君（機械工学科）にも、編曲できるかどうか検討してくれ、とお願いしてみました。その結果、私と同じ結論に達しましたので、その旨を某先生に伝えたのでした。「歌えるように直してもいいよ」というようなご返事をいただきましたが、そのまま放っておりました。
藤井先生とともに来学された服部先生とは、以前、私が東京にいた頃、友人の結婚式でお会いして、いささかの面識がありましたので、ご挨拶をしました。黒岩先生はじめ、そのときご出席の本学の先生方は、私が服部先生と面識があることを知って驚かれていらっしゃいましたが、ナニ、服部先生は私のことなどは記憶になかったらしいので、友人の結婚披露宴で先生のマンドラの演奏後にアコーディオンを弾いた男であるぞ！ ということを申し上げてようやく思い出してくれたような次第。威張るほどのことでもなく、自慢するほどのことでもなく･･･。
歌詞としては、石狩平野、手稲山、広々とした平原、大学の裏は正真正銘のすすき野、などなど、いろいろな注文が出ました。また、黒岩先生からは、通常、作詞と作曲は同時進行なのか、どちらかが先なのか、などのご質問が出たりして、和気藹々のうちに校歌作成の準備が進みました。服部先生の北海道工業大学の略称は？ というご質問に対して、すでに北海道新聞が命名して「道工大」が普及し始めていることや、「北工大」では歌いにくいだろうと思ったり、最後にはフルネームを使ってくださいという希望も申し上げました。出来上がった詩は、「道工大」ばかりでフルネームが出てきませんが･･･。また、あれほど、「ぼつ」の詩が長すぎるとおっしゃっていた割には、新しい校歌も負けじ劣らず長いものではありますが･･･。
しばらくして、校歌が完成し、歌唱指導をかねて、服部先生オン自ら本学へいらっしゃるということになり、再び学長に呼ばれ、ピアノを格安で購入したいので紹介しなさい、といわれました。ヤマハにお願いして、免税で購入したピアノが、いま、サニーフィールズ専用のように使われている一番小さい型のグランドピアノです。公認されている学校ならば、どんな学校でもおそらくその値段で購入できるはずです！
いよいよ、校歌の練習日です。パイプを咥えた気障な服装の服部先生が2号館４、5階にあった大講堂（現在は、二つの教室に分解されています。当時は、約600名収容可能な講堂で、入学式や卒業式に使っておりました。）にお出ましになり、新品のピアノの前に座り、いきなり、「道工大、道工大、道工大、道工大、おおわれらが道工大」というところから練習が始まりました。開学当初、手稲駅に降りてタクシーを拾い、「工業大学へ」というと、「どこだい？」と聞かれた現実があったことを思い出していました。
その後、入学式や卒業式のたびに、式次第に「校歌披露」という項目があり、服部先生が吹き込んでくださったテープによって音大生が歌う校歌の「道工大、道工大、道工大、道工大、おおわれらが道工大」へ差し掛かると、卒業生や新入生から失笑が聞こえたものでした。いまや、卒業式では、北海道厚生年金会館でサニーフィールズが演奏してくれ、入学式では札幌コンサートホール、「キタラ」で、プロのバリトン歌手が朗々と本格的に歌ってくださるので、失笑はなくなりました。30数年たって、ようやく、本格的な校歌として定着（？）しております。歌える学生は応援団以外にはあまりありませんが･･･。
蛇足ですが、私のメイヨのために書きます。服部正作詞作曲による名校歌のできばえにイタク感動（！？）した私は、「ぼつ」校歌を見直しました。「おおわれらが母校」という詩で締めくくっていた原詩を「おおわれらが北海道工大」とダイタンに修正して原著者の賛意をとりました。その部分の修正と同時に、原著者が書いたメロディーも全面的に書き改めました。後に、私が学生部長時代に、当時の名学生係長だった奥野氏を誘惑して、学生歌として学生便覧に蘇らせた「悪事」を告白しておきます。以来、昨年度までの学生便覧には、「詠み人知らず」形式で載せていただいており、ひそかに自己満足をしておりましたが、今年度からA４サイズになった学生便覧にはもはや掲載されておりません。ケダシ、定年退職とは寂しいものでゴザイマス。
５．千葉先生の思い出
開学当初、文学ご担当であった千葉宣一先生は、まことに大人物であり、高邁な文学者らしく、文章もご高話も非常に難しいものでありました。この先生が短い在籍中に、本学のために残された名句は枚挙にいとまがないほどであります。一つに、学生と教職員は「運命共同体」である。また、学生自治会運動に胸を痛められ、「協学会」を立ち上げました。校歌の話がなぜこの先生の時代に持ち上がらなかったか、わかるような気もしますし、わからないような気もします。
ご着任早々から学生部副部長（部長は当時短大教授の故高橋徹先生）であり、ご本人は、高橋先生のご指示とかご謙遜されておりましたが、私の邪推では、すべての千葉先生の行動は、ご本人からのものであったと思っております。初めての卒業生を送るとき、予餞会なる行事を行ったことがあります。その舞台で、なんと、お経を「独唱」されたのです。しかも、羽織袴姿で！ ご記憶の方々もいらっしゃることでしょう。
さらに、開学間もない頃、十勝沖地震がわが大学をも襲いました。幸い、被害はほとんどありませんでしたが、揺れる最中に学生が騒ぎ出したにもかかわらず、平然と講義を続けられたという逸話も残っております。
あるとき、第1期生諸君の同期会が札幌のホテルで開催されたことがございました。千葉先生もお懐かしいお顔を見せてくださいました。ご挨拶で、「恩師に帯広畜産大学へ転出」の挨拶に伺ったところ、「ああ、畜生大学か。」 この先生にこの師あり、の感！
また、2期生募集のための高校訪問の時期には、当時は、全教職員が中の島に集められ、理事長から恐ろしいおことばとともに、高校ではどんなことを話してくるつもりか、という質問に答えなければならない場面がございました。短大の古い先生方は、実に素直にその質問に答えておりましたが、私たち若輩は「恐怖」のため、千葉先生に代表して答えていただくようにお願いしたものです。快くお引き受けくださった千葉先生は、私にはよく理解できない言葉を連ねて20分くらいも演説されました。当時の理事長には話のレベルが違いすぎたのか、そのあと、すぐ会合が終わりました。
あるお通夜の儀のあとで、千葉先生を囲んで3，4人が屋台のような店で酒を飲み交わしました。そのとき、このようなときに不謹慎ながら、と前置きされて、畜産大への転出を打ち明けられ、「後任は決めたから。」 その先生が「ぼつ」校歌のヌシでゴザイマス。やはり、学生部副部長も兼職でございました。
６．行灯行列と大学祭
現在の図書館の土地は、前身はグランドでした。体育実技は、グランドの石拾いが必修科目です。一説には、拾った石の数で成績が評価されたとか。
協学会執行部の学生諸君が軸となって大学祭実行委員会が立ち上がり、第1回大学際が開かれることになり、前夜祭的に、クラス単位（だったと思いますが）に行灯を作り、これを担いで、手稲町内を練り歩くという行事が企画されました。最もできのよい行灯には賞を与え、そのできばえの優劣を競うというものだったように記憶しています。この行事は、2、3年ほど続いて立ち消えました。どんな理由からだったのでしょう？
鮮烈に記憶に残っているのは、第1回目の行灯行列です。当時の学生には「芸術家」が揃っていて、見事なできばえの行灯ばかりでした。手稲本町の道路を練り歩いて、再び大学へ戻り、行灯のできばえを審査してから、グランドに焚いたファイアストームの中に投じて燃やしてしまうのですが、私には、折角の見事な作品が燃え上がるのがもったいなく感じたものでした。ファイアストームは、国鉄から譲り受けた古い枕木を積んで燃やすのです。ほとんどの学生諸君が参加していました。
私の学生時代には経験したことがない行事で、学生諸君よりも興奮していたに違いありません。写真が残っていないかなぁ。今の学生に見せたいね。
大講堂を会場にして、弦楽四重奏のコンサートも催しました。当時の札幌交響楽団のメンバーが格安で出演してくださいましたが、お客さんが少なくて恐縮したことを覚えております。リハーサルのための部屋を用意していなく、たまたま空いていた3階の教室にご案内したり、楽屋もないため、てんてこ舞いしました。出演料など、細かなことは全部忘れてしまいました。その4人のメンバーは、今でも活躍されております。
７．大学院設立
大学院の話は、相当以前から出たり引っ込んだりしておりました。担当の主任教授も決まっていたように聞いておりました。
第5代学長、松本正先生のとき、電気工学科と応用電子工学科の2学科に大学院を作るということになりました。その他の学科は、時期尚早につき、時期が熟すのを待つ、ということでした。うわさでは、大学院は財政的に「まかた」しない、というのが法人の考え方であると聞かされておりました。すなわち、大勢の学生を入れるわけにはいかず、少人数ながら、先端の研究を指導するとなれば、納付金だけでは当然足りず、持ち出しが多くなる、ということであります。結局、建築工学科がぎりぎりの時期に入り込むことができて、3専攻で申請しました。幸い、3専攻とも認可されました。
そのときに、事後チェックのために文部省から派遣された委員の先生方の長が、偶然とはいえ、有江幹男先生（現学校法人北海道尚志学園理事長）で、「成り立ちの古い学科の行く末はどうなさるおつもりか。」と言うような内容を問いただしてくださったそうです。
こういう原稿には書かないほうが安全であることが多く、これ以上には言及しませんが、結局、機械と土木が次に誕生しました。機械は、ともに「1期生」である経営を抱き込んで、仲良く機械システム工学専攻という名称で修士課程を立ち上げました。自慢できることは、大学院を立ち上げるに当たり、不足の教員なしに自前で認可にこぎつけたことでした。その勢いで、博士後期課程も有江学長（当時）の元で、無事誕生することができました。
修士課程や博士後期課程申請のための書類をすべて一手に引き受けたことによって、本学のために少しは役に立てた、という気持ちから、いい経験をさせていただきました。この後は、大学院の内容の充実とともに、世間が飛びつくような研究成果を挙げる若手の先生や学生の出現を心から期待申し上げます。
８．福祉生体工学科へ転出して
8学科体制への再編に当たって総まとめ役を仰せつかり、任の重さを感じつつ、委員の先生方のお力を拝借しながら進めました。
この学科は、旧応用電子工学科で生体電子工学を研究されていた先生方が中心となって編成した学科です。他学科から移籍した先生は、私と電気工学科から山下政司先生の二人です。新生北海道工業大学は「ヒューマニティとテクノロジーの融合」と銘打って、人文社会系に進みたい学生にも入りやすい学科を、という趣旨で本学科も作られましたが、その後の調べで、臨床工学技士を受験できる資格を取れるようにしました。文部科学省のほかに厚生労働省の認可が必要で、無事認可されております。この春、第1期生15名が受験し、13名の合格者を出しました。若手の先生方の努力に頭が下がりますと同時に、最後の追い込みで先生方のあきらめを見事に裏切った13名の合格者諸君に心からの賛辞を送りたいと思います。今回は失敗だった二人の諸君も、あと一歩です。次に成功することを祈っています。
私が、なぜ、この学科に異動したかについては、私自身のことだけでは話が済まないので書くことを控えます。この学科に移動しても役立つような仕事がなく、はなはだ皆様にご迷惑をおかけしたのではないかと、心苦しく思うこのごろです。
９．おわりに
長々と、とりとめもない事柄を書き並べ、これが、機械工学科ならびに機械システム工学科卒業生のお目に留まるかと思うと、いささか寒い気持ちです。書くうちに、次から次にいろいろと思い出してくるものです。あっという間の38年でしたが、そのほとんどを北海道工業大学と機械工学科のために働くことができました。今の学科にはお役に立つようなことをした記憶がないため、「定年前の暇人がいた」程度にさせていただくことにします。いろいろな先生や職員の皆様にはご迷惑のかけっぱなしです。乞う、お許しを。
「大学冬の時代」などということばがあったり、「学生の常識は先生の非常識」などということばがあったり、本当に過ごしにくくなりました。終わりにあたり、すべての先生方に、チェロの神様的存在であるパブロ・カザルスが残した名文を捧げます。
『教師たることは重大な責任を持つことである。教師はほかの人間の生活を形成したり、方向づけをするのに手を貸す。こんな重大かつ厳粛な職業がありえようか。子供と青年は私たちの最大の宝である。彼らに心砕くことは世界の将来について考えることだ。さらにまた彼らの精神を育成し、彼らの世界観を形成する意義、彼らが将来従事する仕事の訓練をし、その準備をさせることの意義を考えなさい。私は教える職業ほど大切な職業はありえないと思っている。よき教師、真の教師は生徒の父でもある。』
アルバート・E・カーン編／吉田秀和・郷司敬吾訳「パブロ・カザルス 喜びと悲しみ」、
朝日選書439、朝日新聞社、（1991）。「４ マドリード（冒頭、p.51）」
丸山先生は現在福祉生体工学科に所属されておりますが、平成13年の改組までは機械工学科に永く在籍されておられました。：編集子
（平成17年6月14日掲載）
私は、昭和42年（1967）4月1日付で、当時の学校法人自動車学園（現・北海道尚志学園）が設立した北海道工業大学に物理の教師として採用（出身が理学部物理学科だったせいで）になり、身分は助手でした。大学を出てすぐに理化学研究所に入り、3年と1日で退所、日本楽器製造�蝓文宗Ε筌泪廊蝓砲遼務て算拇江�託となり、1年で退社してこの大学へ赴任しました。今年で38年目を迎えております。当初、教養部に所属し、三好康雅先生（当時講師）の下に配属されました。ちなみに、三好先生は私より1歳若い。
現在の校舎はまだ工事中で、私たち新人５人は、中の島の北海道自動車短期大学5階の１教員室に間借り生活を始めました。故高橋徹先生（後に法人の専務理事、現職のままご逝去）のご案内でその部屋に通されたとき初めてお会いした先生は、千葉宣一助教授（当時、文学担当。3年くらいで帯広畜産大学へ）、小林修講師（当時、ドイツ語担当。20年後、創価大学へ）のお二人で、間もなく若き岩井泰夫助手（当時、数学担当。現在、総合教育研究部部長、学校法人評議員）がお見えになり、ややしばらくして、三好康雅講師（当時、物理担当。昨年3月をもってご勇退。本学名誉教授）が着任。小さな部屋にぎっしりと入れた机と椅子を5人の新人がひしめいておりました。
その頃の学園本部は、増永治作理事長初め、上層部には警察上がりの方々がいらっしゃいました。本学も初代事務局長、故小山内清衛氏もその一人。昭和41年12月に認可され、翌1月から学生募集を始めたので、機械工学科と経営工学科の2学科、それぞれ定員60名ずつでしたが、思うように学生が集まらなく、私の記憶でも4月に2回か3回の入学試験に立ち会いました。全員の面接がありました。第1期生の数は、結局、機械約100名、経営約70名ほどで始まりました。三好先生と小林先生（講師組）が機械の担任、私と岩井先生（助手組）が経営工学科の担任に決まりました。
4月も中旬を迎える頃から、学則や学生生活に関する規則作りに追われるようになり、連日夜10時頃まで会議の連続があったように記憶しております。そろそろ学生運動がにぎやかさを報道される頃でもあり、学生生活に関する規則類は、それに関する項目で被いつくされている感じを持ちました。
4月中旬頃の会議で、われわれ5名の新人教師のための新校舎の部屋割りが決まりました。ようやく内装が終わったので、明日からは前田の校舎に勤務してよろしい、ということになって、長靴を履いて、手稲まで国鉄（当時）で出かけました。幸い、新たな門出を祝うような晴天だったことを記憶しております。
当時の手稲駅は、木造平屋建てで、南口しかありませんでした。今の北口界隈には、牧場があり、牛がのんびりと草を食んでいましたし、『オーシャン』だったと思いますが、酒蔵のような木造の建物も駅に隣接していました。
手稲駅のホームから遠くに工大だと思われる建物が見えました。南口を出て、駅舎をぐるりと迂回して、踏切を渡り、現在の北口方面に出ます。駅と大学と思われる建物の間には、ほとんど住宅らしいものはなく、原野が広がっていたように思います。当時の本学は、それほど『人里離れたところ』に位置していたのです。中の島校舎で入学試験を受けた第1期生諸君は、はたして、どんな感情をもって大学へ来るだろうか、などと思いながら、北海道工業大学だと思われる建物に向かって歩き始めたものです。20分ほども歩いた頃、かまぼこ型の体育館らしい建物が見えました。たしか、体育館はまだないはず、と思いながら歩き続けました。それは、鉄北小学校の校舎でした。
その向こう側に3階建ての建物が見えましたが、窓から布団を干しております。大学の校舎が3階建てであることは、頻繁に行われた打合せで頭に入っておりました。それにしても、内装が済んだばかりの校舎で布団を干すわけがありません。そこは、旧国鉄の官舎でした。30分も歩いたでしょうか。ようやく広々とした空き地の片隅に木材の足場がかかった3階建ての建物に到達しました。工事を続けている人々の姿が見えました。
さて、どこからあの建物に入っていくのか。正門も何もありません。もちろん、「北海道工業大学」という「看板」もありません。ただ、右手に木造の平屋の建物があり、やがて、それは大型車教習所の事務所と管理住宅であることがわかりましたが･･･。私の格好は、晴天に長靴スタイルでしたが、これが正解のスタイルであることにすぐ気がつきました。新築中の工大に入るためには、運び込んだ未整地のグランドをずぶずぶぬかりながら進む以外の方法がなかったのでした。
ほうほうの体でたどり着いた校舎に入ろうとしましたが、長靴が泥だらけです。幸い、玄関の近くに靴洗い場（？）のような場所があり、水道から水を出して靴を洗い、校舎に入ります。あらかじめ会議で見ていた図面に従って、2階へあがり、私の部屋として予定されていたところにたどり着きました。内装がすんだ直後のため、校舎の中はペンキとシンナーのにおいで満ちていました。ドアは開いたままでしたので、中を覗きますと、机も椅子も戸棚も何もかもなく、まだ空っぽです。ついでに他の部屋も覗いてみましたが、条件は同一でした！
その後、どのような経路をたどって、手稲の地で勤務するようになったか、ほとんど記憶に残っておりません。初日の印象があまりにも強烈だったために、記憶喪失したのでしょう。いつの間にか机も椅子も戸棚も揃った部屋で、新しい生活を始めておりました。
３．開学式と入学式
昭和42年4月27日（あるいは28日？）、かろうじて4月中に開学にこぎつけました。1号館3階の2教室分を続けた部屋で、開学式に引き続き入学式が厳粛に執り行われました。学校法人や短大からの方々を含め、数十人の来賓とともに、機械工学科と経営工学科の新入生約170名が晴れやかな顔をそろえました。当時の趨勢として、ほとんどの新入生が学生服でした。
私は、大学の教師になるなどと考えてもいなかったころゆえ、全員男子ばかりの新入生を前にして、ものすごく緊張していたことを忘れません。式が午前中から始まったのか、午後だったのかすら覚えておりません。
おそらく、2時間ほど（だろうと思っています。）で両方の式が終わり、そのあとは何をしたのか、その日の流れが皆目記憶にありません。よほど重症の記憶喪失に侵されていたのでしょう。その日もたしか晴天だったはずです。もはやグランドもぬかることはなかったはずです。
４．校歌の思い出
ピロティを含む2号館が完成した頃、私の知らないところで校歌の制定の話が進んでいたようです。開学以来4、5年ほども過ぎた頃だろうと思います。初代学長の武田直秀先生から第2代学長の黒岩保先生に代わっていました。武田先生は、開学1年ほどたった頃、心臓の病で倒れられ、年度途中から黒岩先生が代理を勤められ、新年度から第2代学長に就任されていました。当時はまだ、短大と工大の学長を兼務されていた時代です。
ある日、突然、学長からお声がかかり、校歌について相談したいから君も出席しなさい、といわれました。当時、本学で倫理学（哲学？）を集中講義されていた藤井義夫先生（前・一橋大学教授）が作曲家の服部正氏（当時、国立音楽大学の教授）をお招きして、作詞と作曲を依頼しようということでした。その少し前に、千葉先生のあとを継いだ文学ご担当で学生部副部長の某先生から、「校歌」という標題の歌詞と楽譜を渡され、サニーフィールズが演奏できるように編曲してください、という依頼を受けておりました。そのとき初めて、某先生の作詞が長すぎるという理由で「ぼつ」になったことを耳にしました。しかし、当然、「ぼつ」手当てはいただいたことをそのご本人から聞きました。
某先生作詞作曲による校歌を家に持ち帰り、編曲すべく取り組んでみましたが、某先生の曲は、音域が広く、歌詞の1字1字に当てた音符のため各小節の単位が4の倍数になっておらず、このままではサニーフィールズが演奏可能な編曲ができないという結論に達しました。「変曲」をするしかないという判断でしたが、念のためサニーフィールズを創設した第1期生の加藤君（機械工学科）にも、編曲できるかどうか検討してくれ、とお願いしてみました。その結果、私と同じ結論に達しましたので、その旨を某先生に伝えたのでした。「歌えるように直してもいいよ」というようなご返事をいただきましたが、そのまま放っておりました。
藤井先生とともに来学された服部先生とは、以前、私が東京にいた頃、友人の結婚式でお会いして、いささかの面識がありましたので、ご挨拶をしました。黒岩先生はじめ、そのときご出席の本学の先生方は、私が服部先生と面識があることを知って驚かれていらっしゃいましたが、ナニ、服部先生は私のことなどは記憶になかったらしいので、友人の結婚披露宴で先生のマンドラの演奏後にアコーディオンを弾いた男であるぞ！ ということを申し上げてようやく思い出してくれたような次第。威張るほどのことでもなく、自慢するほどのことでもなく･･･。
歌詞としては、石狩平野、手稲山、広々とした平原、大学の裏は正真正銘のすすき野、などなど、いろいろな注文が出ました。また、黒岩先生からは、通常、作詞と作曲は同時進行なのか、どちらかが先なのか、などのご質問が出たりして、和気藹々のうちに校歌作成の準備が進みました。服部先生の北海道工業大学の略称は？ というご質問に対して、すでに北海道新聞が命名して「道工大」が普及し始めていることや、「北工大」では歌いにくいだろうと思ったり、最後にはフルネームを使ってくださいという希望も申し上げました。出来上がった詩は、「道工大」ばかりでフルネームが出てきませんが･･･。また、あれほど、「ぼつ」の詩が長すぎるとおっしゃっていた割には、新しい校歌も負けじ劣らず長いものではありますが･･･。
しばらくして、校歌が完成し、歌唱指導をかねて、服部先生オン自ら本学へいらっしゃるということになり、再び学長に呼ばれ、ピアノを格安で購入したいので紹介しなさい、といわれました。ヤマハにお願いして、免税で購入したピアノが、いま、サニーフィールズ専用のように使われている一番小さい型のグランドピアノです。公認されている学校ならば、どんな学校でもおそらくその値段で購入できるはずです！
いよいよ、校歌の練習日です。パイプを咥えた気障な服装の服部先生が2号館４、5階にあった大講堂（現在は、二つの教室に分解されています。当時は、約600名収容可能な講堂で、入学式や卒業式に使っておりました。）にお出ましになり、新品のピアノの前に座り、いきなり、「道工大、道工大、道工大、道工大、おおわれらが道工大」というところから練習が始まりました。開学当初、手稲駅に降りてタクシーを拾い、「工業大学へ」というと、「どこだい？」と聞かれた現実があったことを思い出していました。
その後、入学式や卒業式のたびに、式次第に「校歌披露」という項目があり、服部先生が吹き込んでくださったテープによって音大生が歌う校歌の「道工大、道工大、道工大、道工大、おおわれらが道工大」へ差し掛かると、卒業生や新入生から失笑が聞こえたものでした。いまや、卒業式では、北海道厚生年金会館でサニーフィールズが演奏してくれ、入学式では札幌コンサートホール、「キタラ」で、プロのバリトン歌手が朗々と本格的に歌ってくださるので、失笑はなくなりました。30数年たって、ようやく、本格的な校歌として定着（？）しております。歌える学生は応援団以外にはあまりありませんが･･･。
蛇足ですが、私のメイヨのために書きます。服部正作詞作曲による名校歌のできばえにイタク感動（！？）した私は、「ぼつ」校歌を見直しました。「おおわれらが母校」という詩で締めくくっていた原詩を「おおわれらが北海道工大」とダイタンに修正して原著者の賛意をとりました。その部分の修正と同時に、原著者が書いたメロディーも全面的に書き改めました。後に、私が学生部長時代に、当時の名学生係長だった奥野氏を誘惑して、学生歌として学生便覧に蘇らせた「悪事」を告白しておきます。以来、昨年度までの学生便覧には、「詠み人知らず」形式で載せていただいており、ひそかに自己満足をしておりましたが、今年度からA４サイズになった学生便覧にはもはや掲載されておりません。ケダシ、定年退職とは寂しいものでゴザイマス。
５．千葉先生の思い出
開学当初、文学ご担当であった千葉宣一先生は、まことに大人物であり、高邁な文学者らしく、文章もご高話も非常に難しいものでありました。この先生が短い在籍中に、本学のために残された名句は枚挙にいとまがないほどであります。一つに、学生と教職員は「運命共同体」である。また、学生自治会運動に胸を痛められ、「協学会」を立ち上げました。校歌の話がなぜこの先生の時代に持ち上がらなかったか、わかるような気もしますし、わからないような気もします。
ご着任早々から学生部副部長（部長は当時短大教授の故高橋徹先生）であり、ご本人は、高橋先生のご指示とかご謙遜されておりましたが、私の邪推では、すべての千葉先生の行動は、ご本人からのものであったと思っております。初めての卒業生を送るとき、予餞会なる行事を行ったことがあります。その舞台で、なんと、お経を「独唱」されたのです。しかも、羽織袴姿で！ ご記憶の方々もいらっしゃることでしょう。
さらに、開学間もない頃、十勝沖地震がわが大学をも襲いました。幸い、被害はほとんどありませんでしたが、揺れる最中に学生が騒ぎ出したにもかかわらず、平然と講義を続けられたという逸話も残っております。
あるとき、第1期生諸君の同期会が札幌のホテルで開催されたことがございました。千葉先生もお懐かしいお顔を見せてくださいました。ご挨拶で、「恩師に帯広畜産大学へ転出」の挨拶に伺ったところ、「ああ、畜生大学か。」 この先生にこの師あり、の感！
また、2期生募集のための高校訪問の時期には、当時は、全教職員が中の島に集められ、理事長から恐ろしいおことばとともに、高校ではどんなことを話してくるつもりか、という質問に答えなければならない場面がございました。短大の古い先生方は、実に素直にその質問に答えておりましたが、私たち若輩は「恐怖」のため、千葉先生に代表して答えていただくようにお願いしたものです。快くお引き受けくださった千葉先生は、私にはよく理解できない言葉を連ねて20分くらいも演説されました。当時の理事長には話のレベルが違いすぎたのか、そのあと、すぐ会合が終わりました。
あるお通夜の儀のあとで、千葉先生を囲んで3，4人が屋台のような店で酒を飲み交わしました。そのとき、このようなときに不謹慎ながら、と前置きされて、畜産大への転出を打ち明けられ、「後任は決めたから。」 その先生が「ぼつ」校歌のヌシでゴザイマス。やはり、学生部副部長も兼職でございました。
６．行灯行列と大学祭
現在の図書館の土地は、前身はグランドでした。体育実技は、グランドの石拾いが必修科目です。一説には、拾った石の数で成績が評価されたとか。
協学会執行部の学生諸君が軸となって大学祭実行委員会が立ち上がり、第1回大学際が開かれることになり、前夜祭的に、クラス単位（だったと思いますが）に行灯を作り、これを担いで、手稲町内を練り歩くという行事が企画されました。最もできのよい行灯には賞を与え、そのできばえの優劣を競うというものだったように記憶しています。この行事は、2、3年ほど続いて立ち消えました。どんな理由からだったのでしょう？
鮮烈に記憶に残っているのは、第1回目の行灯行列です。当時の学生には「芸術家」が揃っていて、見事なできばえの行灯ばかりでした。手稲本町の道路を練り歩いて、再び大学へ戻り、行灯のできばえを審査してから、グランドに焚いたファイアストームの中に投じて燃やしてしまうのですが、私には、折角の見事な作品が燃え上がるのがもったいなく感じたものでした。ファイアストームは、国鉄から譲り受けた古い枕木を積んで燃やすのです。ほとんどの学生諸君が参加していました。
私の学生時代には経験したことがない行事で、学生諸君よりも興奮していたに違いありません。写真が残っていないかなぁ。今の学生に見せたいね。
大講堂を会場にして、弦楽四重奏のコンサートも催しました。当時の札幌交響楽団のメンバーが格安で出演してくださいましたが、お客さんが少なくて恐縮したことを覚えております。リハーサルのための部屋を用意していなく、たまたま空いていた3階の教室にご案内したり、楽屋もないため、てんてこ舞いしました。出演料など、細かなことは全部忘れてしまいました。その4人のメンバーは、今でも活躍されております。
７．大学院設立
大学院の話は、相当以前から出たり引っ込んだりしておりました。担当の主任教授も決まっていたように聞いておりました。
第5代学長、松本正先生のとき、電気工学科と応用電子工学科の2学科に大学院を作るということになりました。その他の学科は、時期尚早につき、時期が熟すのを待つ、ということでした。うわさでは、大学院は財政的に「まかた」しない、というのが法人の考え方であると聞かされておりました。すなわち、大勢の学生を入れるわけにはいかず、少人数ながら、先端の研究を指導するとなれば、納付金だけでは当然足りず、持ち出しが多くなる、ということであります。結局、建築工学科がぎりぎりの時期に入り込むことができて、3専攻で申請しました。幸い、3専攻とも認可されました。
そのときに、事後チェックのために文部省から派遣された委員の先生方の長が、偶然とはいえ、有江幹男先生（現学校法人北海道尚志学園理事長）で、「成り立ちの古い学科の行く末はどうなさるおつもりか。」と言うような内容を問いただしてくださったそうです。
こういう原稿には書かないほうが安全であることが多く、これ以上には言及しませんが、結局、機械と土木が次に誕生しました。機械は、ともに「1期生」である経営を抱き込んで、仲良く機械システム工学専攻という名称で修士課程を立ち上げました。自慢できることは、大学院を立ち上げるに当たり、不足の教員なしに自前で認可にこぎつけたことでした。その勢いで、博士後期課程も有江学長（当時）の元で、無事誕生することができました。
修士課程や博士後期課程申請のための書類をすべて一手に引き受けたことによって、本学のために少しは役に立てた、という気持ちから、いい経験をさせていただきました。この後は、大学院の内容の充実とともに、世間が飛びつくような研究成果を挙げる若手の先生や学生の出現を心から期待申し上げます。
８．福祉生体工学科へ転出して
8学科体制への再編に当たって総まとめ役を仰せつかり、任の重さを感じつつ、委員の先生方のお力を拝借しながら進めました。
この学科は、旧応用電子工学科で生体電子工学を研究されていた先生方が中心となって編成した学科です。他学科から移籍した先生は、私と電気工学科から山下政司先生の二人です。新生北海道工業大学は「ヒューマニティとテクノロジーの融合」と銘打って、人文社会系に進みたい学生にも入りやすい学科を、という趣旨で本学科も作られましたが、その後の調べで、臨床工学技士を受験できる資格を取れるようにしました。文部科学省のほかに厚生労働省の認可が必要で、無事認可されております。この春、第1期生15名が受験し、13名の合格者を出しました。若手の先生方の努力に頭が下がりますと同時に、最後の追い込みで先生方のあきらめを見事に裏切った13名の合格者諸君に心からの賛辞を送りたいと思います。今回は失敗だった二人の諸君も、あと一歩です。次に成功することを祈っています。
私が、なぜ、この学科に異動したかについては、私自身のことだけでは話が済まないので書くことを控えます。この学科に移動しても役立つような仕事がなく、はなはだ皆様にご迷惑をおかけしたのではないかと、心苦しく思うこのごろです。
９．おわりに
長々と、とりとめもない事柄を書き並べ、これが、機械工学科ならびに機械システム工学科卒業生のお目に留まるかと思うと、いささか寒い気持ちです。書くうちに、次から次にいろいろと思い出してくるものです。あっという間の38年でしたが、そのほとんどを北海道工業大学と機械工学科のために働くことができました。今の学科にはお役に立つようなことをした記憶がないため、「定年前の暇人がいた」程度にさせていただくことにします。いろいろな先生や職員の皆様にはご迷惑のかけっぱなしです。乞う、お許しを。
「大学冬の時代」などということばがあったり、「学生の常識は先生の非常識」などということばがあったり、本当に過ごしにくくなりました。終わりにあたり、すべての先生方に、チェロの神様的存在であるパブロ・カザルスが残した名文を捧げます。
『教師たることは重大な責任を持つことである。教師はほかの人間の生活を形成したり、方向づけをするのに手を貸す。こんな重大かつ厳粛な職業がありえようか。子供と青年は私たちの最大の宝である。彼らに心砕くことは世界の将来について考えることだ。さらにまた彼らの精神を育成し、彼らの世界観を形成する意義、彼らが将来従事する仕事の訓練をし、その準備をさせることの意義を考えなさい。私は教える職業ほど大切な職業はありえないと思っている。よき教師、真の教師は生徒の父でもある。』
アルバート・E・カーン編／吉田秀和・郷司敬吾訳「パブロ・カザルス 喜びと悲しみ」、
朝日選書439、朝日新聞社、（1991）。「４ マドリード（冒頭、p.51）」
丸山先生は現在福祉生体工学科に所属されておりますが、平成13年の改組までは機械工学科に永く在籍されておられました。：編集子
（平成17年6月14日掲載）
