義肢装具学のための知識
慣性モーメントについて

北海道科学大学 保健医療学部 義肢装具学科(昆 恵介)

慣性モーメントの影響

一般的に回転中心から重心が離れるほど,物体は回転しにくい.このことを力学では慣性モーメントが大きいという.アイススケート選手が腕を抱え込むと回転速度が増していくのを思い出して欲しい.腕を抱え込むことで,回転軸からの距離を短くし,慣性モーメントを小さくして回転速度を増していたのだ.したがって重心位置が高くなり、回転中心から距離が離れるほど慣性モーメントが大きくなり、物体は回転しにくくなりバランスをとりやすいというわけである。

なぜ慣性モーメントを求めたいのかをはっきりさせておこう。動機は大切である。慣性モーメントは「回転運動における質量」のような概念であって、後に登場する力のモーメントと角加速度との関係をつなぐ係数のようなものである。物体の慣性モーメントを計算することが出来れば、どれだけの力がかかったときにどれだけの回転をするのかを予測することが出来るので義肢装具の機械設計などの工業的な応用に大変役に立つのである。もちろん理論的な応用も数限りないので学生にはちゃんと身に付けておいてもらいたいと思うのである。

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