東芝様による流体機械および制御の最前線の講演会

 2月27日に東芝株式会社からお越しいただいた、松田寿様より講演会が行われました。
以下の2点について御講演されました。

1.パッシブ流れ制御を利用した流体機械開発
  ・超高速エレベータの空力騒音対策
  ・ガスタービンフィルム冷却の改善

2.アクティブ流れ制御を利用した流体機械開発
  ・プラズマアクチュエータの基礎研究
  ・プラズマアクチュエータの風車適用研究

パッシブ流れ制御を利用した流体機械開発

・超高速エレベータの空力騒音対策

 近年、日本、中国をはじめ経済成長が進み、それを象徴するように高層ビルが立ち並んでいます。ビル内の縦の交通機関として利用されてるのがエレベータです。そして、高層ビルに伴う高速化が必要となります。しかし、エレベータは高速になればなるほど騒音問題が発生します。そこで東芝様は騒音問題の原因を流体によるものとして研究を進めていたようです。
 そこで、松田様方は小型の従来型転落防止板が付属したエレベータかご模型を作製し風洞実験を行いました。可視化の結果、転落防止板の影響で上昇時と下降時を比較した際に、流れが全く異なることが確認されました。そこで、転落防止板を兼ねた整風カバーを装着し、かご周りの全体の整流化を狙った形状の模型(高コスト)と、転落防止板端部の縦渦発生を抑制を狙った形状の模型(低コスト)を作製し、再度実験を行いました。結果として高コストではあったものの、整風カバーを装着した模型のほうが大きな剥離流れを生じないので圧力変動が小さいため、空力騒音低減が可能となりました。
 また、TAIPEI101で超超高速エレベータとして実機適用されています。

・ガスタービンフィルム冷却の改善

 近年、エネルギー問題が重視されている。そのためには高効率化が必要である。松田様方は高効率ガスタービンの開発を行うために冷却翼技術の向上により効果的な膜冷却流を実現する孔形状の開発を行いました。ストレート孔は吹き出し流が吹き抜けてしまう課題があり、ディフュージョン孔は吹き出し流背後の巻き込み流れを改良する余地があるため、縦渦発生により、噴出し流の更なる抑制を狙った新型膜冷却孔である渦発生体付きディフュージョン孔を考案されました。
 漢音液晶法での可視化の結果、渦発生体付きディフュージョン孔が最も効果的あることを確認されており。冷却効率分布試験でも同様に新規考案した渦発生体付きディフュージョン孔が最も効果的であることを確認されたそうです。

アクティブ流れ制御を利用した流体機械開発

・プラズマアクチュエータの基礎研究

 プラズマアクチュエータとは故障の原因となる機械的駆動部を持たず、非常に薄い噴流を誘起できるものであり、時定数の短い電気的制御が可能であり、装置をコンパクト化でき実装に適している装置です。2007年にバリア放電を利用した新しい流体制御技術を詳述。2008年に非平衡プラズマを用いた気流制御技術の動向調査。さらに、NACA0015翼に対する剥離抑制効果について研究。放電を非定常制御した場合(パルス変換制御)の有効性を把握。また、連続放電では、流れ場に変化を与えれず、OFF時との違いがないことが確認されました。

・プラズマアクチュエータの風車適用研究

 プラズマアクチュエータの風車適用研究の背景として、変動自然風、乱流を用いる風力発電は、電力安定が困難であるため研究が進められていた。小型風車風洞実験を行い、回転場流れに対するプラズマ気流制御効果を検討した結果、回転場でも効果があることが確認されました。三重大学農場30kW風車フィールド試験では、実風状況下でも効果があることが確認された。世界初の挑戦として、1.75MW商業風車実機検証試験が行われ、結果は、プラズマOFFにくらべて、同一風力帯においてプラズマONの場合はタービン回転数が増幅を確認されたそうです。この結果より、大型風車でも効果があることが確認されました。