義肢装具学のための知識
力を求めるための速度と加速度について
北海道科学大学 保健医療学部 義肢装具学科(昆 恵介)
力とは
今までに“外力”、“衝撃力”、“慣性力”という用語がしばしば登場してきた。これらの用語に不随する力とはいったいどういうものなのか?また一般的に使用されている力が“強い”、“弱い”とはいったいどういうことなのか?力とはそもそも目に見えないものであり、理解しにくいものであるが、義肢装具の力学を理解するためには力の概念を理解する必要があるのでこの章では力について説明していく。
まず力の概念を理解するには、速度と加速度の概念を理解する必要があるので先に速度について簡単に説明する。
(1)速度とは
速度は距離を時間で割ったものであり、日常よく体験する概念である。右図のように自宅から病院まで10kmの道のりを30分かけて到着したとすると、平均の速度は20kmであることは容易に想像できる。実際の車のスピードメーターをみると、信号で止まれば0km/hであり、スピードを出せば60km/hと常に変動しているが、あくまでも平均速度である。
では図を参考に歩行速度を求めてみる。
となることがわかる。成人男子の平均歩行速度が5km/hであること考えると、比較的遅い歩行であるといえる。
(2)加速度とは
加速度は“速度の変化“を時間で割ったものであり、日常生活ではあまり意識することはないが、常に地球から重力が働いており、地球の中心に引っ張られている。このとき右図のように重力加速度9.8(m/s2)という名の加速度で引っ張られていることになる。
また下図のように時速30kmで走行してきたバイクが停車している乗用車に衝突した場合の加速度を考えてみる。
加速度は“速度の変化”を時間で割ったものであるから、秒速8.3mから0.2秒かけて速度0になる急激な速度の変化である。式にすると
となる(単位に注意する)。このようにして加速度を求めていくのである。次節からはこの加速度を利用して力を求める。