義肢装具学のための知識
はじめに

北海道科学大学 保健医療学部 義肢装具学科(昆 恵介)

 義肢装具を勉強していく際には、必ずといって良いほど力学の話が話題になる。この章では、なぜ力学を学んでいく必要があるのかを知り、また力学の基礎をイメージさせることを目的としたい。そのためには力、モーメント、重心などの概念を知る必要があり、本章ではそのことを簡単に説明していく。

 例えば脊髄の神経を傷つけるとしばしば、足くびの下に蹴る力が失われ「踵足」という変形になることがある。このような病気になってしまうと、黙って立っていることが困難になり装具の装着を余儀なくされる。義肢装具士はこのような障害者に対して装具の基本設計を行っていくわけであるが、ただ製作しているわけではない。障害者に提供する以上安全性を考慮しなければならない。日本では製造物責任法という法律が存在しており、製造責任者である義肢装具士は製品として患者に提供する装具がどのくらい力に耐える装具が必要であるか概算を見積もる必要がある。どのくらいの力が必要であるかは力学の知識が必要というわけである。


TOP   ⇔  次へ