義肢装具学のための知識
床反力について
北海道科学大学 保健医療学部 義肢装具学科(昆 恵介)

歩行中における床反力

 脚立の蝶番(ちょうつがい)が人間でいう股関節だと思うと脚立と人間の下肢は非常によく似た構造である。もし右図のように地面が氷のように摩擦がないと横方向の抵抗が非常に少なくなり、脚立がどんどん開いてきて最後は潰れることが容易に想像できるはずである。さらに氷が解けて水になると、地面の垂直方向の抵抗もなくなり、脚立は水の地面に沈んでいく(地球の中心に向かって沈む)。

 実際の脚立の足にはゴムが取り付けあり、地面との摩擦力を増しているため、左右上下からの抵抗を受ける。その結果、脚立にストッパーがない場合には、床反力は脚立の重心に向かうことになる。一方でストッパー付の脚立では、脚立が開こうとする力を床の摩擦で止めているわけではなく、ストッパーで反作用の力を生み出しているため、床反力は重心に向かわずに真上に立ち上がることになる。

 実際の人間の下肢では、筋や靭帯や骨といったストッパーの役割をするものがあり、人間の脳はこのストッパーをうまく調整しながら、床反力という力をコントロールしているのである。








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