モエレ沼公園

 地球温暖化やゴミ問題など環境に対する問題意識が高まる今日。
 このモエレ沼公園も以前はゴミ捨て場であったが,イサム・ノグチの手により,今日の緑あふれる公園に生まれ変わった。
 モエレ沼公園は老若男女問わず,多くの人を緑や独自の世界観で包み,市民の癒しや憩い,集いの場となり,2005年にその完成を向かえる。今回,モエレ沼公園を見学し,シンボルであるガラスのピラミッドだけでなく,その他の場所にもスポットを当ててみた。
 イサム・ノグチのモエレ沼公園に対する情熱や構想,それに対する自分たちの印象を述べてみた。

〜ガラスのピラミッド〜
 
 公園内に入り,まず目に飛び込んで来るのがガラスのピラミッド(愛称「HIDAMARI」)である。「大地の彫刻」モエレ沼公園のシンボルとなる建物である。 
 ガラス張りの表皮は愛称の通り,建物内に太陽光を存分に取り込む。その時,骨組みの影が内部に降り注ぎ,中にいる人々はたくさんの線に囲まれる。
 館内には休憩所となるアトリウム「イサム・ノグチギャラリー」や文化活動のためのスペース,レストラン,ショップなどのサービス施設等があり,公園全体の拠点となっている。

 機能としては冬に振った雪を溜め,夏にはその雪を冷房のために使用するなど,環境への配慮も考えられている。

〜サクラの森〜

 ガラスのピラミッドから東の方向に,およそ3000本の桜が植えられている森が広がっている。
 その森の中,7箇所に遊具が設置されている。この遊具も全てイサム・ノグチによってデザインされたものである。これら一つ一つが「彫刻作品」のようなデザインで,高い芸術性が感じられる。色彩豊かで形もユーモラスで子供たちの遊び心をくすぐる。
 各遊具の下の舗装には,衝撃を吸収するウレタン性のセーフティマットが敷き詰められており,安全への配慮がうかがえる。
 子供たちが自らの感性で芸術を肌で感じ,遊ぶ。この遊具には創造の可能性を広げる力がある。

〜プレイマウンテン〜

 ピラミッドや古代の遺跡を思わせる「プレイマウンテン」は高さ30mというインパクトと人を集める求心力を備え合わせている。
 苦労の末,山を登りきると雄大な景色・豊かで力強い緑を一望でき,心地よい風を感じ,開放感に包まれる。モエレ沼公園を訪れた際は,是非この山の山頂に立って欲しい。

〜テトラマウンド〜

 テトラマウンドは四つの面をもつ三角錐と芝生の小さな岡で構成されている。
 三角錐を構成している三本の柱には,天まで伸びんとする力強さを感じる。表面のステンレス素材は,太陽の光を更に輝かせ,様々な表情が見られる。その表情に近代性を感じる。 岡の上に登ると柱によって分けられた空が見える。普段は一面に広がる空が区切られることにより,空が狭く,身近な感覚におちいる。この空間では非現実的な体験ができる。

〜ミュージックシェル〜

 ミュージックシェルは半球の建物と前面の直径15mのステージによって構成されている。 ステージには空間を区切る天井や壁がないため開放感のある空間になっている。
一見ただのオブジェクトに見えるが,コンサートや舞台などを行う際,独自の構造がパフォーマンスを更に盛り上げるであろう。

〜まとめ〜

これらモエレ沼公園に共通しているものは「山」であると思う。遊具や彫刻,ガラスのピラミッドなど大小様々な「山」は,本来の自然の大地の姿を象徴したものと考えられる。そんな自然の大地の中に森や緑が生茂り,川や湖は潤いを与え,自然の力強さ・本来あるべき姿を表現したものに感じられる。このモエレ沼公園は「大地を刻む」ということを表現した イサム・ノグチの傑作である。今回の見学で私たちは,イサム・ノグチの情熱や構想の一部分を,私たちなりに解釈できたであろう。

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