義肢装具学のための知識
について
北海道科学大学 保健医療学部 義肢装具学科(昆 恵介)

4-3-3.力(運動方程式)

 世界各国において単位の統一が進む中、我が国でも法定計量単位を世界共通の国際単位であるSI単位に統一するため、1992年に計量法の全面改正が行なわれ、翌年施行された。単位変更による経済社会への影響を考慮して3年から7年の猶予期間が設けられていたが、1999年9月30日をもって期限が切れ、その翌日から経済活動及び日常生活においてSI単位を主体とした計量単位の使用が義務付けられた5)6)。新計量法により、今まで慣れ親しんでいた重量は1999年を限りに追放処分となり、今日では重量という単位は用いられなくなってしまった。月面の重力は地球重力の1/6しかない。6kgの質量の物体は月面でも6kgの質量であるが、6kgfの重量の物体は月面上では1kgfになる。重量とは、このように状態に応じて変化するあやふやな存在である。そのような理由から1999年には力の単位はN(ニュートン)に統一されたようである.

それまで“kgf”や“kg重”が力の単位として用いられてきたが,世界的にSI単位であるN(ニュートン)に統一されることになった.計量法には罰則も存在し,公文書などにkgfなどの記載をすれば,罰せられることもあるのである.

 ここで初めて登場してきたN(ニュートン)であるが.前述したニュートンの3大法則


1)慣性の法則
2)運動方程式
3)作用・反作用の法則

 

を思い出して欲しい.2)の運動方程式が力を理解するのには重要なのだ.運動方程式は方程式というくらいだから,式なのである.ともかく見てみよう

F=ma(運動方程式)

である.なんのこっちゃと思うかもしれないが,この式こそが力学のすべての基本形の式であり,これの応用で我々の日常生活でおこる現象のすべて説明することができる.もう少し我慢して欲しい.

 

 

 

と記号の意味を説明すれば,少しは理解できるであろうか?この式中のFは力であるからN(ニュートン)そのものを表している.つまり

 

 

 

 

と書き換えても同じことである.質量(m)SI単位において“kg”で表記し,加速度(a)はm/s2で表す.したがって,

  

となる.

 

 

 

体重計に乗ると100kgの質量の人であると,体重計にかかる力(N)は

 

 

である.9.8m/s2は言わずと知れた重力加速度である.前節の加速度で説明してあるので,確認して欲しい.

また右図のように時速30kmで走行してきたバイクが停車している乗用車に衝突した場合の力を考えてみる。加速度は前節での計算から41.5m/s2である.バイクと運転者の合計の質量が150kgであったとすると






である.質量100kgの人が980Nの力で体重計を押していることを考えると,時速30kmの衝突では体重の6倍の衝撃をうけることになる.一般的に交通事故では速度の二乗に比例するといわれ,速度が2倍ならば,衝撃力は4倍になるといわれている.

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